中小企業診断士

【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論14 人的資源管理<雇用管理>

 こんにちは、Kennyです!前回は組織をいかに活性化するかと、ナレッジマネジメントについて見ていきました。

 前回の記事はこちら→【独学・中小企業診断士】企業経営理論13 組織活性化とナレッジマネジメント

 本日は、組織論の7回目、「人的資源管理」です。企業の内部資源と言えば、「人」、「モノ」、「お金」、「情報」です。その資源のうち、「人」に関する資源を管理する手法について見ていきます。人的資源管理の方法には、「雇用管理」、「能力開発」、「人事評価(人事考課)」そして「報酬管理」の4つがあります。今回は雇用管理について見ていきましょう。

雇用管理

 雇用管理とは、人を採用してからその人が退職するまでの配置、人事異動、休職などを含む雇用にまつわる広い範囲の管理のことを言います。

1.採用管理

 採用とは人材を組織に加える活動のことです。まずは「要員計画」を立て、どの部署にどのような人材を、何人必要なのかを明らかにします。そのうえで、「要員計画」に基づいて、採用活動を行います。採用にかかわる用語を見ていきましょう。

要員計画

 企業の経営計画に基づいて、将来どんな能力の人材が、どの部門・職務に、何人必要になるかを長期的・短期的に定めた計画のことです。すべての採用活動はこの要員計画に基づいて行われます。

新卒採用

 社会人1年目の採用です。他の企業に勤めた経験がないため、組織文化や愛社精神を育成しやすく、将来会社を背負う幹部候補として計画的な育成が可能です。

中途採用

 他の企業に勤めた経験のある人材の採用です。即戦力としての活躍が期待でき、自社の育成過程では得られない知識や経験を入手することができます。

インターンシップ

 新卒採用における人材のミスマッチを防ぐために、学生が企業で就業体験を行う制度です。

RJP(Realistic Job Preview)戦略

 人材のミスマッチを防ぐための広報戦略の1つ。読んで字のごとく、企業の仕事のリアルを事前に見てもらいます。つまり、企業のプラスの面だけでなく、マイナスな面もありのまま伝えることで、入社後のギャップを少なくし、離職を回避させようという戦略です。

人材のダイバーシティ

 直訳すると「人材の多様性」です。様々な人材を取り込むことで、均一な人材では生まれなかったイノベーションが起きやすくなります。

正規雇用

 正規社員を雇うことです。

非正規雇用

 契約社員やパートタイマー、アルバイトなどが含まれます。企業からすると、人件費を固定費から変動費化できるため、収益や需要の変化に対応しやすくなります。ただし、その反面、正規社員との待遇差などから、モラールが低下しやすい、企業として知識や経験が蓄積しにくいなどのデメリットもあります。対策としては優秀な非正規社員を正規社員として雇用することが挙げられます。

2.配置管理・異動管理

 人材を適した職務に割り当てるための管理のことです。採用して初めての職務を割り当てるのが「配置」です。「異動」の中には、職位はそのままに異なる職務に異動する「配置転換」、そして職位が変わる「昇進・昇格、降職・降格」があります。

配置を適切に行うには、事前準備として以下の3ステップが必要です。

  1. 「要員計画」を立てる
  2. 個々の職務に必要とされる「資格要件」を明確にする
  3. 従業員の持つ「職務能力」を分析する

 この3ステップが踏まれていれば、要員計画に基づき、職務の資格要件に合った職務能力を持つ従業員を割り当てることができます。

異動に関連する用語を見ていきましょう。

・自己申告制度

 定期的(年に1回など)に現在の仕事についての評価や満足度、今後のキャリアや担当したい仕事について従業員自ら申告させ、異動や能力開発の材料にする制度です。

・社内公募制度

 新しい仕事について、仕事内容や資格要件を明らかにした上で、社内で公募をかける制度です。意欲があり、適した職務能力を持つ可能性のある従業員を集められるメリットがあります。

・ジョブローテーション

 定期的に配置を変え、社内の様々な業務を経験させる手法です。企業の全体像把握につながるとともに、能力の発掘にもつながります。後述のCDPなどと組み合わせて活用されます。

・キャリア開発制度(CDP; Career Development Program)

 従業員の長期的なキャリア目標を定め、キャリア形成を中長期的な視点で支援していく制度です。

・複線型人事

 キャリアパスについて、1つの部署で上に上がっていくという1つのキャリアパスだけであった人事制度を見直し、複数のキャリアパスを設け、その中から従業員が自身のキャリアパスを選択できる制度です。社員のモチベーションにつながるほか、企業としても専門領域に特化した社員を育てることができます。一方で、評価や昇進昇格のルールが複雑になり、人事関連のコストがかかります。

3.退職管理

 退職とは、労働契約を解除し、企業から人材が去っていくことです。退職にまつわる制度について見ていきましょう

定年退職

 従業員が一定の年齢になると自動的に退職になる制度です。職種にかかわらず、すべての正規労働者で定年年齢が同じ「一律定年制」、職種によって定年年齢が異なる「職種別定年制」などがあります。大多数は一律定年制を採用しています。

中途退職

 何らかの理由で雇用契約の途中で退職することです。退職理由によって自己都合による退職と会社都合よる退職とに分かれます。

早期退職優遇制度・選択定年制

 早期退職優遇制度は、定年前の一定期間に退職する従業員に対しては、退職金を優遇する制度です。企業としては人件費が抑えられるとともに、空いたポストに若手が入ることで、組織の活性化が期待できます。

継続雇用制度・再雇用制度

 高齢化や長寿命化を背景に、高齢者が働き続けられる環境を整備するために、2012年に高年齢者雇用安定法が改正されました。これにより、希望者全員に65歳までの雇用機会を確保することが義務付けられました。継続雇用制度がない場合には定年年齢を65歳以上にしなければなりません。なお、それらの制度がある場合の定年年齢は60歳以上です。従業員にとって有利な順に以下の3つの制度があります。

1.定年延長

 定年そのものを65歳以上にする制度です。従業員にとっては最も有利ですが、企業にとっては人件費が増えます。

2.継続雇用制度
1)勤務延長

 定年年齢に達した従業員の中で企業が特に必要とする人材に限って能力や健康状態に応じて退職を延長する制度です。雇用条件は退職前と変わらない場合が多いです。

2)再雇用制度

 定年年齢に達した従業員を一度退職させ、改めて雇用する制度です。雇用条件がリセットされ、通常退職前より条件は悪くなります。

次の記事はこちら→【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論15 人的資源管理<能力開発・人事評価>

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