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【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論17 労働関連法規<労働基準法・前半>

 こんにちは、Kennyです!前回までは企業が取り組む人的資源管理について見てきました。

前回の記事はこちら→【独学・中小企業診断士】企業経営理論16 人的資源管理<報酬制度>

 今回からは、人的資源管理にまつわる企業が守るべき法令、労働関連法規について見ていきましょう。労働関連法規は、労働基準法、労働安全衛生法、労働保険・社会保険その他に分けられます。試験には出ないようですが、それぞれの制定背景を簡単に見ていきましょう。

労働関連法規の制定背景

労働基準法

 労働基準法は、1947年、戦後すぐに制定されました。戦前の労働条件が劣悪であったことから、日本再建のために重要な労働者を守るために制定されました。その後、1987年に1週間あたりの法定労働時間を48時間から40時間に短縮開始、フレックスタイム制の導入があり、1993年に週法定労働時間が40時間になり、時間外労働・休日労働の割増賃金率がアップ、2008年に1か月60時間超える時間外労働について割増賃金率アップし(中小企業は猶予あり)、代休の導入がされました。

 そして2018年にいわゆる「働き方改革」の一環で、時間外労働の上限規制が導入され、中所企業で猶予されていた割増賃金率アップが施行されました。

労働者災害補償保険制度(労災保険法)

 1947年に労働基準法と同時に制定されました。

雇用保険法

 1947年に失業保険法が制定されましたが、その後の経済社会の変化に合わせる形で1949年に制定されました。

労働安全衛生法

 日本が高度成長期を迎え、「モーレツ社員」といった言葉が生まれた1970年頃には労働災害による死亡者が毎年6,000人を超えるようになりました。これを受け、1972年に職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成するために、労働安全衛生法が制定されました。

 さて、それぞれの背景を見てきたところで、いよいよ本題に入っていきたいと思います。

労働基準法

1.位置づけ

 労働基準方は上で見た通り、企業に対して弱い立場になりやすい労働者の保護を目的に、労働条件の最低基準を定めたものです。あくまで最低基準であり、これさえ守れば良い、という性質のものではありません。

 労働条件を定めるものには、労働基準法の他に以下のものがあります。

労働協約

 労働組合と使用者が書面で交わしたルールです。

就業規則

 労働者が就業にあたって守るべき規律や労働条件についての具体的なルールです。

労働契約

 労働者個人が使用者と結んだ契約です。

 これらのルールには序列があります。上位から、労働基準法、労働協約、就業規則、労働契約の順となります。下位のルールは、上位のルールに反する内容にすることはできません。

2.就業規則

 常時10人以上の労働者を有する事業者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。また、就業規則は届け出ればよい訳ではなく、社内に掲示したり、書面にて交付するなどして、労働者に周知させることが義務付けられています。

 就業規則には「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」、そして「任意的記載事項」の3つがあります。そのうち、「絶対的および相対的必要記載事項」に漏れがある就業規則は作成・届出義務違反となってしまいます。

絶対的必要記載事項

  • 労働時間関連(始業・終業時刻、休憩、休日、休暇)
  • 賃金、昇給について
  • 退職について

相対的必要記載事項

  • 退職手当
  • 臨時の賃金
  • 最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるもの
  • 安全及び衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償、業務外の傷病扶助
  • 表彰および制裁
  • その他労働者すべてに適用される事項

3.労働契約

 労働契約には期限が無い無期雇用契約と、期間が決まっている有期雇用契約とがあります。契約期間の上限は原則3年です。しかし、例外的に5年、またはそれ以上とすることができます(特定の高度専門職や60歳以上の場合、有期事業の場合)。

4.均等待遇

 国籍、信条または社会的身分を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的扱いをしてはならないと定められていますが、労働基準法では男女差別は賃金でのみ禁止しています。差別的扱いの中には性別を理由にする優遇も含まれます。

5.賃金

 賃金を支払う際に守るべき原則があります。

  • 通貨で支払う
  • 直接労働者に支払う
  • 全額支払う
  • 毎月1回以上支払う
  • 一定の日に支払う

 「賃金はCD RAM(Currency, Directly, Regularly, All, Monthly)で」とでも覚えてしまいましょう。

 割増賃金の計算は以下の通りです。なお、ここでいう深夜とは原則夜10時~朝5時までを言います。

 明日は労働基準法後半を見ていきます!今日もありがとうございました~!

次の記事はこちら→【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論18 労働関連法規<労働基準法・後半>

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