中小企業診断士

【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論3 成長戦略

こんにちは、Kennyです!前回は戦略を決める前に押さえるべきポイントとして、「ドメイン」についてご説明しました。

前回の記事はこちら→【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論2 ドメイン

本日は企業経営理論3回目、今日のテーマは「企業戦略(成長戦略)」です。ドメインを定義した後、その領域でどのように資源を配分して成長するか、に関連する事項を見ていきます。

製品・市場マトリックス(成長ベクトル)

 1960年代にアンゾフが提唱したもので、当時多くの事業を抱えたコングロマリットという大企業が、その事業を管理するためのツールとして開発されました。製品と市場について新規・既存の観点からどのような成長の方向を目指すかことが適しているかを表したものです。

市場浸透戦略

販売促進などに力を入れ、既存の市場において既存の製品をより販売する、シェアを拡大することを目指します。

新市場開拓戦略

イートインのレストランがテイクアウトを始めるなど、新しい市場を開拓して、そこに既存製品を投下しくことを目指します。

新製品開発戦略

新しい製品を開発して、それを既存の市場に販売していくことを目指します。新製品開発には既存製品を大きく革新した新製品と、これまでの製品を改良した改良製品を含みます。

多角化戦略

新しい製品を新しい市場に生み出す=新規事業を開拓する

上の4つの戦略は、その性質から大きく2つに分けられます。

拡大化戦略は現在持っている企業の市場や製品を足掛かりに、広げていく、拡大を目指す戦略のこと。それに対して多角化戦略は市場も投下する製品も新規である戦略。

多角化戦略について

多角化戦略を選択する誘因

他の戦略と比較し、よりチャレンジングな多角化戦略ですが、なぜ多角化を行うのでしょうか。そのメリットを見ていきましょう。多角化のメリットには以下のようなものがあります。

外的成長誘因

  • 外的環境(機会、脅威)に対応したい

内的成長誘因

  • 複数のSBUを持つことでリスク分散したい
  • 企業内で利用しきれていない経済資源(組織スラック)を活用したい(相補効果、コンプリメント効果を得たい)
  • SBU同士のシナジー効果(相乗効果)を得たい

多角化戦略の分類

一口に多角化戦略によって新規事業を始めると言っても、既存事業との関連度によって、以下のように分類することができます。

関連型多角化

 SBU(戦略事業単位)同士の関連性が深く、使用する技術、製品、流通チャネル、管理のノウハウなどを共有することができる。シナジー効果を得られやすい一方、成長やリスク分散での効果は少ない。場合によって、SBU同士で競合してしまうこともある。

非関連型多角化

 SBU同士の関連性が浅い多角化で、成長やリスク分散効果が見込める一方、シナジー効果を得にくい場合がある。これまでのSBUで培ったノウハウや人材などがそのまま活かせないことが多く、M&Aや戦略的提携を行うなど、外部から資源を調達する必要がある。

M&A

M&A は「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の略称です。非関連型多角化で出てきた外部資源の調達方法の1つです。買収する・される企業同士の合意の有無により、敵対的M&Aと友好的M&Aとがあり、それぞれ合併・買収手法には以下のようなものがあります。

1.敵対的M&A時の手法

TOB(株式公開買付け)

買収したい企業が、買収の対象となる企業の株をある金額(市場相場より高い金額)で買いますと公言して、それに乗った株主から株式を買い取り、対象企業の経営権を奪うという方法。

2.友好的M&A時の手法

MBO(マネジメント・バイアウト)

 企業の経営陣が自社や事業部門を買収して、経営を引き継いだり独立したりする。

MBI(マネジメント・バイイン)

 企業の経営陣が社外の第三者に自社株を買い取らせて、経営権を引き継いでもらう。

EBO(エンプロイー・バイアウト)

 企業の従業員が自社や事業部門を買収して、経営を引き継いだり独立したりする。

LBO(レバレッジド・バイアウト)

 買収する対象となる企業の資産を担保に、少ない自己資金で買収すること。

戦略的提携

M&Aは買収を行うためにコストが高くなります。コストを抑えつつ外部資源を利用する方法として戦略的提携があります。これは企業同士が独立性を維持したまま、緩やかな結びつきを持ち、互いに資源を利用し合う方法です。

 企業の所有権が移らない緩やかな関係であるため、裏切りもないことはないですが、裏切った企業には悪評が立つ可能性があり、その可能性が裏切りの抑止力となります。裏切りの可能性を抑えつつ、提携によるメリットを最大限得ることが課題となります。

リストラクチャリング

ここまで事業ポートフォリオのマネジメントとしていかに経済資源を割り当てるかという方法について見てきました。しかし、マネジメントには割り当てだけでなく、時には撤退が必要なこともあります。不採算SBUを切り捨て、その分の資源を有望なSBUに振り分けるような事業構造の再構築を「リストラクチャリング」略してリストラと呼びます。リストラというと、従業員をクビにする人員削減のイメージがありますが、人員削減はリストラクチャリングの方法の1つです。他にも固定費を削減する手法として、アウトソーシングや固定資産を売却などがあります。

リエンジニアリング

事業そのものの再構築でなく、業務プロセスを抜本的に見直すことをリエンジニアリングと呼びます。リストラクチャリングと混同しないように気を付けましょう。

用語

範囲の経済

 複数の事業で経営資源を共有することで費用を削減できるという現象。

規模の経済

製品を沢山製造すると単位当たりのコストに占める固定費の割合が低下するという現象。

SBU

企業戦略を考える際の事業の単位をSBU(Strategic Business Unit、戦略事業単位)

本日もありがとうございました~!
次の記事はこちら→【独学受験・中小企業診断士】企業経営理論4 競争戦略

RELATED POST